愛犬の安楽死と向き合った最後の夜。私を救ったのはZonさんだった。

愛犬の安楽死と向き合った最後の夜。私を救ったのはZonさんだった。

12月頃から高齢犬のZonさんの具合が悪くなり、闘病生活を送っていました。

16才の高齢ということもあり、寒さなどで膵臓、肝臓などが悪化。
歩くことも、食事をとることもできず、通院を続ける日々が続きます。
※入院は、夜間はスタッフ不在とのことで通院を選択。

一時的に回復はしたものの、再び1月の末ごろに悪化。
過酷な闘病生活を送る中、
2019年2月7日。22時40分。
天命を全うし、自宅で息を引き取りました。
16才と9ヶ月。
共に過ごした時間。16才と6ヶ月。
一人と一匹の生活は、終わってしまいました。


Zonさんと過ごした最後の一日

それは、その日の朝のできごと。
皮下点滴をするために動物病院へ。
車で40分ほどかけて、あさイチで病院が開くまで待つ。
点滴はすぐ終わるので、予約せずに診察時間の空き時間ができるまで並んで、
また明日の朝も通う…。
いつもと同じ朝でした。

違いといえば、その日の先生の表情。
先生から静に告げられた言葉。

「あと3日もつかどうか、わかりません。
一週間かもしれませんが、安楽死という選択肢もあります。」

そう告げられました。


安楽死

重い言葉でした。
涙が止まりませんでした。
瘦せこけ、寝たきりでご飯も食べられず苦しんでいるZonさん。
痛みを抱えて、息をするのもやっと。
いつまで通院が続くのか。
毎日、不安と痛みを必死で耐えてきたZonさん。
小さな体はもう限界でした。

先生は「家族とよく相談して、いつでも連絡ください。今日は夜まで僕は病院にいますから。」
そうおっしゃいました。
重い現実がのしかかります。
実際に選択を迫られた瞬間は、耐え難いものでした。

ミニチュアピンシャー
最後になるとは知らずに撮った写真。

治療を続けるか。
安楽死か。
選ぶのは私。
重い責任と選択しなければならない重圧。
すぐ決めることができませんでした。


泣きながらの帰り道

車の中のZonさんは不思議と穏やかな顔をしていました。

もう頑張らなくてもいいんだね。
そう言っているかのような優しい顔。
今でも忘れられません。

少し前から頭によぎっていた”安楽死”。
それを”いつにするか”。
残された時間をどう過ごすのか。
考えるだけで辛すぎて、頭が痛くなるほど泣きました。

そして夜になり、悩んで悩んで、3日後にお願いしようと決めました。
あと3日だけ、一緒にいられたらそれで終わりにしよう。
残りの時間を大切に、穏やかに、思い切り、Zonさんと過ごそう。

ようやく気持ちを落ち着かせ、少しばかり腹をみたし、
いつものようにZonに語り掛け、マッサージをして最後の過ごし方を考えました。
時計を見ると22時を過ぎていたので寝支度をしていると、
かすかな物音が聞こえてきました。

Zonさんが声にならない叫び声をあげていました。
舌をだし、遠くを見つめ、ハゥ-、ハゥ-と弱々しく叫んでいます。
すぐに体をさすり、手足の脈を探しました。
小さな鼓動が伝わります。

「大丈夫!ここにいるよ!」
そう声をかけながら、必死で呼びかけました。
あきらかに何か違います。
声にならない叫び声は、ゆっくりと、小さく、次第に弱くなっていきます。
脈もゆっくりと静かに、しばらくすると止んでしまいました。


2月7日。22時40分

Zonさんは息を引き取りました。
さっきまで暖かかったZonさんの体は、すぐに冷たくなっていきました。
覚悟を決めた矢先…彼は自ら、逝ってしまったのです。
涙でZonさんの姿がぼやけ、呆然とする私。
ただ、ただ、抱きしめるだけしかできませんでした。

この日、すぐに駆けつけてくれた友人の言葉に救われた私。

「Zonさんは自分で決めたんだよ。悩まないように、最後のプレゼントだったんじゃないかな。」

あぁ。そうか。

安楽死で悩んでいた私の代わりに、自分で決めたんだ。
わたしが弱い人間だと知っていたのはZonさんと、友人だけだもの。
最後の精いっぱいの贈り物だったのかな。
優柔不断の私は、最後の最後にZonさんに助けられたような気持ちになりました。
私は安楽死を受け入れることが辛くて、怖くて耐えられなかったかもしれない。

きっと帰りの車の中で見せた、あの穏やかな顔は、このことだったんだね。
Zonさんも私も苦しかったね。
飼い主思いの優しい子だね。
苦しいときも、悲しいときも、嬉しい時も、いつも一緒だったから、
傍にいる事が当たり前だと思っていたよ。
よく噛まれたけど、楽しかったよ。
ケンカ友達がいなくて寂しくなるけど、最高の相棒だったよ。

ミニチュアピンシャー
通院中に、ちょっと寄り道。よく頑張りました。

最後の夜は、体をきれいに拭いて、たくさん語り掛け、
肌触りを一生忘れないように、手と目に焼きつけました。
そして、一人と一匹は数ヶ月ぶりに、熟睡することができました。

長く苦しい闘病、介護生活が終わったね。
わたしの宝物。Zonさん。
ゆっくりお休みなさい。

2018年3月撮影。自然が苦手なZonさん。でもこの時だけはお花に興味深々でした。