チャービルとは|失敗しない育て方|効能|野草のチャービルは要注意

チャービルとは|失敗しない育て方|効能|野草のチャービルは要注意

チャービルは、広く分布するセリ科の一種で、セロリやニンジン、パセリの仲間。
食べると一瞬、ハッとさせられるほど、風味に魅力がある不思議なハーブです。
「美食家のハーブ」とも言われており、品の良さが窺えます。
チャービルの名は「喜びのハーブ」という意味のギリシャ語からきており、
古代の人々は、この春のハーブを新しい生命の象徴としていたそうな。

 information

科名 セリ科シャク属/1~2年生
別名 セルフィーユ/cerfeuil
学名 Anthriscus cerefolium
原産地 ヨーロッパ南東部 アジア西部
草丈 約30~60cm
発芽|生育温度 15~20℃
収穫期 2~7月 開花期6月~7月

 チャービルとはどんなハーブ?

とにかく歴史の古いハーブです。
ハーブは古代の歴史によく登場しますが、
チャービルの種をお墓に入れた歴史上の人物もいるようです。
フランス料理には欠かせないと言われており、
繊細な味でマイルドなのにチャービルです!という存在感が美食家を楽しませているとか。

 参考文献
ハーブの歴史
出版:原書房 著者:ゲイリー・アレン/(訳)竹田 円

チャービルはエジプト中央国(紀元前2040年頃~1782年頃)初期からよく知られ、利用されていた。
ツタンカーメンの墓には、コリアンダーと同様に、死出の旅への備えとしてチャービルの種子が入った籠(かご)もおさめられていた。

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 チャービルの育て方

 種まき 春と秋が適期

春と秋の彼岸ごろにじかまきしましょう。
発芽と生育温度は15~20℃。
お住いの地域の季節に合わせて栽培を始めましょう。

乾燥を嫌うので、土は保水性がオススメ。
※赤玉小粒6:腐葉土4の割合で、元肥を少々。
土にたっぷりと水をやり、種を撒く準備をします。
プランターの場合、底から流れ出るくらい、しっかりと水をかけます。
水が浸透するまでし放置してから、種をまきましょう。
プランターや鉢の大きさによりますが、30分~1時間くらいを目安に行います。

10cm間隔に5~6粒ずつまきます。
好光性(光が当たらないと発芽しない性質)なので覆土(ふくど:土で覆う)はせず、
指先、または板切れなどで軽く押さえておきます。軽くグーッと。

チャービル作業カレンダー

 乾燥が嫌い

表面が半乾きになったら水やりをします。
土はやや湿り気のあるほうがよいようです。
成長が早いので、本葉が4~5枚になったら2本に間引き、最終的には1本立ちにします。
2ヶ月ほどで収穫できるので外側の付け根から摘んで、いただきましょう。
※間引きは強い苗を残すために、弱い芽を摘むことです。一か所に5~6粒まくのは競争しながら成長を促すためですが、
間引きをしないと養分の取り合いになり、貧弱なまま成長することに。強い苗を育てるために心を鬼にして行います。

 直射日光も嫌い

チャービルは繊細です。
明るい日陰で、涼しい所を好みます。暑さに弱く、害虫もたくさんつきます。
アブラムシ、ハダニ、よくわからな小さな黒い虫がつきます。
室内でキッチンハーブとして育てるか、
屋外では防虫ネットや不織布をかけて過保護に育てると良いでしょう。
わたしは自分だけが食べるために育てているので、
夜は屋内、昼間は屋外と移動させて害虫が付かないように育てています。

 追肥のタイミング

葉が黄色っぽくなったら追肥をしましょう。
化成肥料を根元にまく、または液肥を根元にかけます。
枯れかけている葉は根元からきって、新しい新芽が生えるのを促しましょう。

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 移植を嫌う

どこまでも繊細なチャービル。繊細すぎて移植も難しい。
そこで、株や種から栽培したら長く保つように心がけましょう。
お花が咲きだすと枯れてしまいます。
新しい種を収穫して次に備えるもよし、
花が咲きそうな枝を根元から切って、長く収穫し続けるもよし。
お好きな方法でチャービル栽培をしてください。

チャービルの葉

 チャービルに似た野草は危険!

ヨーロッパで自然分布してる有毒のドクニンジン。
日本では北海道、本州の一部で確認されている外来種です。

またの名を”ドクパセリ”と呼ばれ、ギリシャの哲学者ソクラテスが死の間際に毒薬として服用したという話もあります。

姿形がチャービルと似ているため、野生のものを食べるのは危険です。
このドクニンジン、チャービルと違うのは、切ったり折ったり傷をつけると不快な匂いを放つとか。
チャービルが臭い?!と思ったら、それはチャービルではないかもしれません。

詳しくはこちらをご覧ください。
国立環境研究所 侵入生物データベース

 チャービルと相性のよい寄せ植え

コンパニオンプランツとして栽培を楽しむ方法もあります。
コンパニオンプランツはお互いを助け合って栽培する方法の総称で、
小さなプランターでも気軽に試すことができるので、オススメです。

チャービルはセリ科です。セリ科でできるコンパニオンプランツはズバリ。トマト!
トマトはナス科なので、ナス科の野菜を一緒に植えると美味しい野菜が食べられるかもしれません。
自然に委ねる手法なので、必ずしも成功するとは限りませんが、なかなか始めると楽しくなります。

その他のセリ科とナス科などはこちらを参考にしてみましょう。

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 チャービルの効能

チャービルは、伝統的なフランス料理で用いられる
フィーヌゼルブ(数種類の香草を組み合わせたミックスハーブ)の材料に欠かせないことで有名です。
味だけでなく効能にも魅力がたっぷり。

栄養成分
カルシウム、カリウム、リン、セレン、マンガン、マグネシウムなどミネラルの宝庫。
ビタミンA、C、Dも豊富。

伝統利用

古代ローマでは高齢者向きのハーブだった背景がちらほら窺えます。
ローマの哲学者・大プリニウスは催淫薬(さいいんやく/性欲を増進させる作用をもつ薬)とみなし、
高齢者の強壮剤になると考えていました。

17世紀の植物学者でハーブ療法家のニコラス・カルペパーも
「高齢者の冷えた胃を温めて快調にしてくれる」と謳っています。

そのほかに、血液を浄化し、利尿作用がるハーブとして人気が高かったとも言われていますが、
同時代の療法家の間ではチャービルの評価はそれほど高くなかったとも。
効能の人気に対する評価は矛盾している点があるようですが、
古いレシピ本にはチャービルの記述が多く残っており、
薬草としての利用よりも食べることに人気が集中していたのは確かなようです。

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科学的評価

現在では、チャービルには優れた抗酸化作用がり、細胞膜を安定させ、頭痛や消化性潰瘍(かいよう)、
副鼻腔炎(ふくびくうえん)を引き起こす炎症を緩和する作用があることが知られています。
※副鼻腔炎(ふくびくうえん)蓄膿症(ちくのうしょう)とも呼ばれている

 参考文献
ハーブ&スパイス大事典
日本語版監修:日本メディカルハーブ協会
著者:ナンシー・J・ハジェスキー
(NATIONAL GEOGRAPHIC)

ハーブの歴史
出版:原書房 著者:ゲイリー・アレン/(訳)竹田 円